進行性核上性麻痺について

こんにちは。谷川(脳神経内科専門医)です。

皆さんは、進行性核上性麻痺(しんこうせいかくじょうせいまひ)という病気を聞いたことがありますか?

1964年にSteeleらによって報告された疾患で、中年期以降にパーキンソン病に似た症状で発症します。

✓転びやすくなった

✓体が固くなった、動きにくくなった

✓目を動かしにくい

✓物が飲み込みにくい

などの症状が特徴的です。

罹患率はパーキンソン病の1/10程度(パーキンソン病は10万人に100~180人程度、進行性核上性麻痺は10万人に10~20人程度)で発症年齢は70歳前後、男女差についてははっきりしていません。

「パーキンソン病とどこが違うの?」という質問を受けることがあります。
パーキンソン病との違いとしては、
①病初期から転びやすさが目立つこと(易転倒性)
②上下方向に視線が行かないこと(垂直性注視麻痺)
③体の固さが体幹で目立つこと。首が後ろに傾いている(頸部後屈)

とにかく、①転びやすいです。

もう一つ特徴的なのが、②上下方向に視線が行かないこと(垂直性注視麻痺)があります。

上の写真は上を向こうとしているが眼球が上に向かない患者です。この垂直性注視麻痺により、さらに転びやすくなります。

また、③外観上の特徴として、進行性核上性麻痺では首が後ろに傾いており、パーキンソン病では首が前傾しているのが大きな違いです。

また、パーキンソン病との違いとして症状進行スピードのはやさがあり、発症からの余命は約5~9年で、誤嚥性肺炎などが死因となります。

その原因についてですが、『タウ蛋白』という、本来は凝集しないはずの蛋白質が凝集し、神経障害をきたすということがわかっており、その凝集する脳部位に対応する症状を呈します。

たとえば、大脳基底核→体が固いなど、中脳→眼が動かしにくい、橋・延髄→しゃべりにくい/飲み込みにくい、など。

タウ蛋白が凝集するくわしい機序についてですが、『フィラミンA』という分子が過剰に存在することによりタウ蛋白が凝集してしまい、進行性核上性麻痺を発症することが最近の研究で分かってきています。

パーキンソン病はある程度、薬により症状改善を認めますが、進行性核上性麻痺は効果的な治療薬がありません。しかし、フィラミンA、およびフィラミンA過剰を引き起こしている遺伝子を標的にした治療薬の開発が、今後進められることが期待されています。(辻河高陽ら.2022年)

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